kakinokosyobo’s diary

絵本の紹介です

おっ新刊だ!

本屋さんで絵を見ただけで、すぐにわかりました、岡本雄司さんの最新の絵本、こちら

 

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「でんしゃすきなのどーれ」岡本雄司さく/福音館書店(「こどものとも年少版」通巻537号

 

こどものとも」は月刊なので、増刷はしないため、売切れになると悲しいので、すぐにレジに並び購入しました。しかも絵本界の王様、福音館書店から発行されているではありませんか。以前より絵本を出している出版社は増えたと思いますが、やはり編集能力が飛び抜けて高いのは福音館書店だと思っています。なぜなら読み終わったあとのがっかり感や物足りなさが福音館書店から出版された絵本は少ないからです。

(20代の頃住んでいたアパートから福音館書店の本社がわりと近く、ウォーキングでしょっちゅう前を通っておりました)

 

今回の新刊、以前より絵が洗練され、美しくなっています。毎回版画で描かれているとは思えない作品で、しかし版画でしか表現できない岡本さんらしい絵が、ちりばめられています。

 

以前の本も様々な電車が描かれていますが、今回の絵本はいつも以上に、図鑑になりそうな程数も種類も多く、首都圏をはじめ地方の電車から、貨物や特殊な車両も載ってあり、みているだけで楽しく、カラフルで、何度もページをめくりたくなる絵本です。

 

来月で3歳になる次男はすぐに載っている電車を覚えて、外出先でみた特急わかしおを「わかしお、載ってたっけ?」と書かれてないとばかり思っていた私に対し、「載ってるよ!」とちゃんとそのページを開いてみせてくれました。

(この頃の子どもの記憶力は本当にすさまじい)

 

私がこの絵本でいちばん好きなところは、p20、21の「むかしのでんしゃといまのでんしゃ」です。おんなじ電車が、むかし・いま、(例えば)と比べてみるのが、とてもおもしろく、(そういえばこの様に比べて載っている本は見たことがないです。むかしのでんしゃだけまとめた本はたくさんありますが)また電車だけではなく、改札のむかし・いまも描いてあります。

ロマンスカーを背にして、写真撮影をしている親子の服装もむかし・いまで興味深いです。カメラも違うんですよね。

 

岡本さんの描く人物の格好は、ごくごく街で見かける普通の服装を、違和感なく表現されていて、いつも感心しています。今の時代で使われている普段着を描くのはドレスやスーツなど特別な服を描くより、ずっと難しいと思います。よく観察されているのが伝わります。

 

折り込みふろく「絵本のたのしみ」もよかったです。絵本は一般書と違い「著者あとがき」がないので、このふろくで「作者のことば」を読むことができて嬉しかったです。文章からは飾らないやさしい雰囲気が伝わり、絵本から伝わる感覚と同じだと思いました。

 

また生物学者福岡伸一さんの文章も載っており、こちらもよかったです。家にもある村松昭の「川シリーズ」が紹介されていて、嬉しくなりました。この本も大好きな絵本のシリーズで全部持っています。

 

ちなみに私の「でんしゃすきなのどーれ」は、p20東海道本線113系です。地元で走っていた115系とほぼ一緒で、馴染み深いからです。次男の好きなでんしゃはページごとにありましたが、p4、5では特急「あずさ」です。

憧れの書店開店のお話し「新聞記者、本屋になる」

たまたま週一で届けてもらっている、野菜宅配の段ボール箱に敷かれていた、新聞紙に書評として紹介されていて読んでみたのがこちら

新聞記者、本屋になる (光文社新書)

「新聞記者、本屋になる」 落合博 著 光文社(光文社新書)

 

「読書家でなくとも本屋は始められる」と本書では書いてあるが、綿密な情報集め、多彩な人脈、その体力、そして資金力も、さすがに新聞記者だけあって、ただのシロウトではない、と舌を巻く内容でした。本屋さんを始めるにあたり、参考文献も載せているように、たくさんの書籍も読み、研究し、そして何が自分にあっているのがを吟味して(著者は吟味などとは表現せずに面倒なことはしたくないからという言い方をしていたが)いるのがよく伝わる。

 

p96「ベストセラーは置かない」の章に

『〜それよりも、知らなかった本と出会える本屋でありたい。思いがけない出会いのある本屋。つまり出会い系の本屋。本に詳しい知り合いの言葉を借りるならは「出合い頭の衝突」をどれだけ引き起こすことができるか。』とあり、私自身も本屋さんにいく理由の一つに、知らない本との出会いがあるので、よく納得した。

 

多分どの書店も、ベストセラーも置きつつ、知らない本を紹介したいという思いは少なくともあるだろう、しかしどこにでもある本屋ではアマゾンを始めとするネットには太刀打ちできず、また大きい書店であればあるほど、選書が難しいところもあるのだろう。

しかし著者のように一人で商いしている本屋で、かつ自分の考えをしっかり持っていれば、例えば著書に書かれているような、他の本屋にはない『個性的な版元の良書』を置いてあれば、ただ本屋に行こうではなく、この本屋に行けば面白そうな本があるかもしれないから行こうとなり、そしてこの本屋でなければならないとなる。もし私が本屋をすることになったとしたら、やはり『この本屋でないと』と思ってもらう店づくりをしたい。(本屋に限らずどんな仕事でもそうだが)

 

またp122に「アマゾンなくして僕の店はない。」と書いてあり、アマゾンを敵ではなく、頼りにし、なくてはならないものと書いてあるのも興味深く、私自身が公共図書館で働いていたときの記憶が蘇った。

 

著者はアマゾンのリコメンド機能を重宝しているとあったが、私が働いていたとき助けてもらったのは、アマゾンの画像付き書籍の情報である。利用者からの本の問い合わせで、タイトルや著者がわかれば図書館の検索システムでも判明するのだか、なんとなくのタイトル、本の表紙の色やイラストなど(主に絵本)で問い合わせがあると、やはりアマゾンが便利で使っていた。例えば、クリスマスの絵本で、青い感じの表紙で、大きいサイズなどと問い合わせがあると、アマゾンで「クリスマス 絵本」と検索し、画像で青っぽいものを探して、利用者にも確認してもらい、あればそこから図書館に所蔵してあるか図書館の検索で探していた。

アマゾンの強みはやはり画像付きであることと著者のいうようにリコメンド機能だ。画像付き書籍検索機能のあるサイトはなかなか見当たらないし、似ている書籍検索機能のあるサイトもまずないのではないだろうか。アマゾンはネット通販サイトの域を超えて、インフラに近い。

 

またこの本を読み、励みになったのが、p164ライティングのレッスンの章、

「読むことと書くことはつながっています。双子のような関係かもしれません。」

「一度うまく書けたからとして次もうまく書ける保証はない、うまく書けなくてもあきらめることなく、とにかく書き続けるしかない。(一部要約)」

 

私もこのブログ記事を2022年4月までに50記事書くのを目標にしているので、書き続ける。(今現在からだと、ざっと一週間で2記事書くことになる)

 

ご主人の上野先生がいてこそ「ハチ公物語-待ちつづけたいぬ」

映画を観て、本でも読んでみようと、手にしたのがこちら

 

ハチ公物語 -待ちつづけた犬- (講談社青い鳥文庫)

「ハチ公物語-待ち続けた犬-」岩貞るみこ 作

真斗 絵  田丸瑞穂 写真 講談社(講談社 青い鳥文庫)

 

小学生中学年向きの小説なので、一時間程で読み終わりました。映画より史実に基づいて具体的なお話で、わかりやすく書いてあり、読みやすかったです。映画も史実を調べて作られているのでしょうが、説明などはないので、映画のあのシーンは、これだったのかと復習できました。

 

この本からはご主人である上野先生が、ハチはもちろんのこと、周りの人、庭の草花など対して心を込めて接しているのが、伝わります。

 

風邪を引いたハチに人間が使う氷まくらと湯たんぽで看病をしたり、雑草すら生えていないような状態だった庭を、丁寧に肥料をあげて、花や野菜が育つ土に変えていき、夏になると、トマトやナス、インゲンやきゅうり、ヘチマなどの野菜が育ち、季節の花は桃、山吹、チューリップ、ヒヤシンス、朝顔、ダリア、コスモスと咲き、女学生さんたちが、『花暦の土手』と呼んでいると書いてあり、さすが東大農学部の教授である上野先生らしいエピソードだなと感心しました。

 

また上野先生の身体を気遣い、3千人を超える卒業生達がお金を出し合い、葉山に別荘をプレゼントしたことに驚きました。こんなに慕われる先生は現代ではいないだろうし、3千人もの卒業生が団結し、先生のために動くことも今の世の中では考えられない。そしてこの別荘は上野先生が亡き後、住む家がなくなった八重夫人のための新しい家の資金となるのですが、そのお話にも驚きました。(映画では八重夫人は実家の和歌山に帰る設定になっていました)

 

今ではハチ公のご主人として知られている上野先生ですが、ハチ公が忠犬でいたのは、やはりご主人が素晴らしい方だったからこそなのだなと改めて感じました。

 

ハチの最期がまたハチらしく、感動し、涙しました。(しかも通勤中の電車の中)

 

「いつもいる渋谷駅西側の改札口から、山手線の線路を超えた反対側、滝沢商店のおかみさんが、ハチが倒れているのを発見。いままで、一度もきたことがらない場所。しかしそこは、上野先生のお墓がある青山墓地に続く道、お墓のほうを向いてたおれていた」(一部要約)

 

ハチには上野先生が亡くなったことなど、とうに知っていて、わかっていながら、渋谷駅で待ち続け、お墓の場所までわかっていたのは明白だと私は考えています。 

一生涯をご主人に捧げ、最期までご主人を慕うその心に、今この文を書きながらも、再度熱く心打たれています。きっとハチが生きていた頃も、その時接していた人々もハチの生き様に心動かされ、ハチが生きているなか銅像を造るに至ったのでしょう。

この本は、非常に詳しくハチ公の一生が書かれているのですが、その理由はあとがきにも書いてあるように非常に詳しい資料「ハチ公文献集」が残っているためなのです。こんなに詳しく残る所以もやはり忠義を貫いたハチ公の生き方に沢山の人が感化されたからなのだろうと思います。

 

 

 

知らないことばかり/映画「ハチ公物語」

名前はみな知っているであろう渋谷のシンボル「忠犬ハチ公」ですが、私も東大の先生を渋谷駅で待ち続けた犬ぐらいのことしか知りませんでした。

 

息子が教科書でハチ公のことが書いてあり、どんな犬?と質問してきたので、せっかくなら映像で見ようとなり、図書館で借りてきたのが、

 

 

<あの頃映画> ハチ公物語 [DVD]

「ハチ公物語」(1987年)107分/カラー

 

ハチ公が秋田で生まれ、渋谷に住む上野先生のところに行き、上野先生が亡くなって、最後は野良犬となっても、毎日渋谷駅で待ち続け、ハチが亡くなるまでの、お話しです。(実際のハチ公は野良犬にはならず、飼い犬として生き続けます)

 

このように書くと、よく知られていることばかりですが、ハチ公のご主人に対する思いの強さが、ビシビシと伝わってくる映画です。いい映画です。

 

心がすっと洗われて、背筋がピシッと通る映画です。ご主人が亡くなっても待ちたいから待つ、その思いのみで一生を生きたハチ、その気概が人間に伝わり、まだ生きている中、渋谷駅に銅像がつくられた理由なのではないかと思いました。

 

忠犬と頭につくのが納得します。

 

また昔の渋谷駅周辺や当時(大正時代かた昭和初期)の生活描写も勉強になります。

 

生活(食べるため)だけにではなく、理想(先生に会いたい)に向かって懸命に生きたハチの姿に、もっともっと理想に挑戦する自分でいたいと省みる機会になりました。

まだ面影残る上野駅/字のない絵本(電車好きの子へ)「やこうれっしゃ」

こちらも息子が想像力をはたらかせて自分でストーリーを作り読んだ、おすすめの「字のない絵本」

やこうれっしゃ (こどものとも傑作集)

「やこうれっしゃ」西村 繁男(にしむら しげお)作 (福音館書店

 

字はなく、絵のみの本ですが、国鉄時代にはしっていた、上野~金沢までの夜行列車の車内が描かれています。

季節は冬、お父さんと赤ちゃんをおんぶしたお母さん、男の子の4人家族が、上野駅から金沢に向かいます。年の暮れなのか、車内は混雑しています。

 

途中、水上駅で停車し、お弁当とお茶を買うところや、夜中に赤ちゃんが泣きだし、困っているお母さん、子どもをトイレにつれていくお父さん、車内でおむつを替えているお母さん、など書かれています。

 

今は金沢へは新幹線で行くことができますが、子育て中の身としては夜行で、しかも子どもを連れて帰省するなんて、想像するだけで、大変さが襲いますが、当時の親はこの絵本のように移動していたんですよね。(もちろん今より子育ての環境はおおらかだったとは思いますが)

 

車内では今では考えられない喫煙しているおじさんも書かれていたり、時代を感じますが、今は無くなった、のんびりした、いろんなものが入り混じった雑多が当たり前な大らかな空気感も感じます。

 

始めのページで上野駅の正面改札が描かれていますが、実際に先日息子たちと見にいきましたが、絵本とは違い改札が自動改札になり、お土産屋さんができていたりなど、変化はありますが、改札上に描かれている大きな壁画は当時のままでした。

 

絵本とおんなじだと嬉しいですね。

 

書いたのは有名な猪熊弦一郎(赤と白の三越の包装紙もこの方の作品)でした。壁画タイトルは「自由」。

 

さすが芸術の森、上野公園の玄関、上野駅です。

 

 

 

 

字がないからこそ楽しめる「じのない えほん」

私が小さい頃に買ってもらい、今でももっている唯一の絵本がこちら

じのないえほん (ブルーナの絵本)

「じのない えほん」 ディック・ブルーナ  福音館書店

 

画像は新版らしく、私のもっている第26刷は「いしいももこ やく」の表記はなく、「ディック・ブルーナ え」のみです。

 

表紙の書体も画像とは異なり、習字のような明朝体に近い書体で、古い感じです。

 

タイトル通り、ストーリーがないので、絵を見て自分でお話しを作るのが、楽しい絵本です。

 

持っている私の絵本には、子どもの頃の私が書いたであろう拙い字で(記憶はまったくないのです)、

 

「おはよう ななこさんはめをさましました」

とはじまるお話を書いてあります。

 

(この絵本を調べるにあたり福音館書店のホームページを見ると、この主人公は「男の子」となって、例としてのお話しが書かれていました。ずっと女の子だと思っていたため、ちょっとびっくり)

 

ストーリーのない絵本は他にもありますが、やはりこの絵本は「子どもがはじめてであう絵本」と裏表紙に書いてあるとおり、世界中から愛され読まれているディック・ブルーナの絵本の中でも、ぜひ読んであげてほしい絵本です。

 

ストーリーがないからこそ、親がその日その日で、少しづつお話しを作って読んできかせることもできますし、年長さんくらいになれば、子ども自身で、お話しをつくって読むこともできます。

 

自分でお話しを作ることができる息子を見たときは、こんなことができるようになったのかと、成長に驚きました。

 

成長を感じるのは日々いろんな場面でありますが、この絵本はその成長を感じることのできた絵本でもありました。

しりとりに興味をしめしはじめたら、おすすめ本「たべものやさんしりとりたいかいかいさいします」

しりとりに興味をしめしはじめた、3歳くらいの子どもに、おすすめの絵本がこちら

たべものやさん しりとりたいかい かいさいします (コドモエのえほん)

「たべものやさんしりとりたいかいかいさいします」作 シゲタ サヤカ (白泉社

 

絵本のなかでは珍しくタイトルが、長いですね。

またこのシゲタサヤカさんのイラストも、個性的で、一度見ると覚えてしまう、インパクトの強い絵です。(たしか最近コンビニで見たお菓子にもイラストが使われていました)

 

あらすじは、タイトルどおりなのですが、やおやさん、パン屋さん、お寿司屋さん、ラーメン屋さん、レストラン、ケーキ屋さん、くだもの屋さん、に並んでいる食べ物たちが、しりとりをする大会のお話しです。優勝チームには、なんでもプレゼントという、豪華な優勝賞品があります。

 

これだけ読んでもなんだかワクワクするお話しです。

 

さて結果はどうなるのでしょう。優勝チームのプレゼントは何でしょう。ほっと心温まるいいお話しで終わります。

 

しりとりの絵本は他にもあるのですが、しりとりが短く、ストーリー性もあるので、はじめはこの絵本が、とっかかりやすくおすすめかなと思います。

 

6歳になった息子もたまに、読むくらいお気に入りの絵本です。3歳くらいのしりとりブームの時は、何度読んだかわからない程、読みました。

 

しりとりをすると語彙が増えますね。大人も想像以上に頭を働かせますし、大人が知っていても、子どもがしらない単語は、使えないと判断したり、しりとりが続くような単語を選んだりと、子育てするまでは、ただの暇つぶし程度に思っていたしりとりが、こんなに楽しく難しいとは思いもしませんでした。

 

そんなことを思い出させる絵本です。