kakinokosyobo’s diary

絵本の紹介です

ご主人の上野先生がいてこそ「ハチ公物語-待ちつづけたいぬ」

映画を観て、本でも読んでみようと、手にしたのがこちら

 

ハチ公物語 -待ちつづけた犬- (講談社青い鳥文庫)

「ハチ公物語-待ち続けた犬-」岩貞るみこ 作

真斗 絵  田丸瑞穂 写真 講談社(講談社 青い鳥文庫)

 

小学生中学年向きの小説なので、一時間程で読み終わりました。映画より史実に基づいて具体的なお話で、わかりやすく書いてあり、読みやすかったです。映画も史実を調べて作られているのでしょうが、説明などはないので、映画のあのシーンは、これだったのかと復習できました。

 

この本からはご主人である上野先生が、ハチはもちろんのこと、周りの人、庭の草花など対して心を込めて接しているのが、伝わります。

 

風邪を引いたハチに人間が使う氷まくらと湯たんぽで看病をしたり、雑草すら生えていないような状態だった庭を、丁寧に肥料をあげて、花や野菜が育つ土に変えていき、夏になると、トマトやナス、インゲンやきゅうり、ヘチマなどの野菜が育ち、季節の花は桃、山吹、チューリップ、ヒヤシンス、朝顔、ダリア、コスモスと咲き、女学生さんたちが、『花暦の土手』と呼んでいると書いてあり、さすが東大農学部の教授である上野先生らしいエピソードだなと感心しました。

 

また上野先生の身体を気遣い、3千人を超える卒業生達がお金を出し合い、葉山に別荘をプレゼントしたことに驚きました。こんなに慕われる先生は現代ではいないだろうし、3千人もの卒業生が団結し、先生のために動くことも今の世の中では考えられない。そしてこの別荘は上野先生が亡き後、住む家がなくなった八重夫人のための新しい家の資金となるのですが、そのお話にも驚きました。(映画では八重夫人は実家の和歌山に帰る設定になっていました)

 

今ではハチ公のご主人として知られている上野先生ですが、ハチ公が忠犬でいたのは、やはりご主人が素晴らしい方だったからこそなのだなと改めて感じました。

 

ハチの最期がまたハチらしく、感動し、涙しました。(しかも通勤中の電車の中)

 

「いつもいる渋谷駅西側の改札口から、山手線の線路を超えた反対側、滝沢商店のおかみさんが、ハチが倒れているのを発見。いままで、一度もきたことがらない場所。しかしそこは、上野先生のお墓がある青山墓地に続く道、お墓のほうを向いてたおれていた」(一部要約)

 

ハチには上野先生が亡くなったことなど、とうに知っていて、わかっていながら、渋谷駅で待ち続け、お墓の場所までわかっていたのは明白だと私は考えています。 

一生涯をご主人に捧げ、最期までご主人を慕うその心に、今この文を書きながらも、再度熱く心打たれています。きっとハチが生きていた頃も、その時接していた人々もハチの生き様に心動かされ、ハチが生きているなか銅像を造るに至ったのでしょう。

この本は、非常に詳しくハチ公の一生が書かれているのですが、その理由はあとがきにも書いてあるように非常に詳しい資料「ハチ公文献集」が残っているためなのです。こんなに詳しく残る所以もやはり忠義を貫いたハチ公の生き方に沢山の人が感化されたからなのだろうと思います。